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2010年4月24日:第十回宇宙セミナーを開催。
 

(文責:斎藤一)。今回で当協会のセミナーも記念すべき十回目を迎え、計50人の宇宙好きの方々に参加していただきました。

 
【最新の有人宇宙開発動向:発表者  五月女】まず始めに、当協会理事長の五月女から「最新の有人宇宙開発の動向」という題目で昨年のセミナー開催からの1年間の世界の宇宙事業について簡単に説明がありました。特に注目していた点は、4月15日に発表された米国オバマ大統領の新宇宙政略についてです。簡単に概要をまとめると以下のようになります。
   
  ●スペースシャトルは2010に退役(Good bye!)
  ●月有人探査計画の中止。
  ●次世代有人宇宙船の開発は米・民間企業に委託。
  ●NASAは2025年までに地球近傍小惑星への有人飛行を実施。
  ●NASAは2035年までに火星の衛星の有人探査を実施。
 
五月女が特に注目しているのは次世代無人・有人宇宙船開発を米・民間企業に委託するという点です。厳密にいえば、「政府は民間企業の競争原理を利用する。」「民間企業によるスペースシップの開発競争が激化する中、政府はその競争力を利用して次期スペースシップを開発する企業に資金提供という形でサポートする。」「最後には開発中のスペースシップ候補の中からスペースシャトルの後継機を選定する。」
 
 
 
 
【STSJツアー報告:発表者  斉藤紀夫様】 次に、当協会のメインイベントであるSTSJのツアー報告を今回ツアーに参加していただいた斉藤紀夫様にしていただきました。ツアーは2009年の8月下旬に実施しました。多くの宇宙系民間企業や団体が集うカリフォルニア州の中でもホットな企業や大学を見学しました。発表後の質疑応答も盛んに行われました。中でも印象に残っているのが「日本国内でもアメリカで実施されているようなイベントを出来ると思うか」との質問に対し、「規制と各個人の熱意の差異といったことから、今はまだ難しい」と回答されたことでした。氏曰く、個人の熱意が日本人のそれとはまったく異なっており、会う人会う人熱意に溢れた人たちばかりだったらしいです。確かに、現在の日本は技術立国というには理科離れや頭脳流出といった問題を抱えており、熱意が薄く感じられると思いますが、少なくとも今回お集まりいただいた方々は熱意に満ち溢れた人達ばかりと思います。氏のおっしゃる通り、「今は」まだ「困難」なだけであり、将来的には日本が世界をリードする可能性もあります。その為にも一歩一歩確実に、宇宙に対する理解を広めていく必要があると感じました。
 
 
 
 
【日本のロケット技術と将来展望  -H-IIBロケット開発最前線と日本のポテンシャル-:講師 堀秀輔様】今回の講演は、JAXAでH-IIA、H-IIBロケットの1段用エンジン「LE-7A」の設計・開発を行っていた堀様から御講演いただきました。内容は、日本が現存所有する宇宙技術を紹介し、それを基に、宇宙事業分野における日本の可能性について考察した内容でした。日本が現存所有する技術は以下の3つです。
   
  ●きぼう(国際宇宙ステーションの日本開発設備。居住空間としての性能や使い勝手は、国際宇宙ステーションの滞在クルーから非常に高い評価を受けている)。
  ●H-IIBロケット(国産ロケット:昨年までに連続10回以上の打上成功を果たしたH2Aロケットの増強型。1段エンジンのLE-7Aをクラスター化し、出力を増大させている。初回の打上は問題なく成功)。
  ●HTV(無人の物資輸送モジュール。H-IIBロケット先端に搭載し、国際宇宙ステーションに滞在中のクルーに必要物資を届けるモジュール。6トンの輸送能力を持ちながら、非常に高いランデブー技術(安全技術)を持ち、NASAをも呻らせた)。
 
氏曰く、宇宙産業において必要な技術はシステム技術とのことです。システム技術とは、多くの要素技術(例えばロケットの打上能力や開発技術)を一つにまとめ上げて運用する技術を指します。上記3つの技術を確立させた日本は、輸送能力や設計技術、搭乗員育成技術といった要素技術をほとんど網羅することになりました。しかし、まだ輸送機の帰還技術や宇宙服の開発技術のような要素技術は行ったことがなく、まだ宇宙大国のアメリカやロシアに並ぶことは出来ていません。しかし日本の宇宙政略には今後、有人飛行や月探査といった計画が挙げられており、アメリカが火星衛星探査を実施する2035年には、必要なシステム技術を全て網羅し、世界の宇宙産業の1強として日本が参画する可能性は十分にあると説明していただきました。
非常にテンションがあがる講演でしたが、要素技術の確立と同時に日本の理科離れや頭脳流出といった問題の解決法を見出すことも重要と感じました。特に技術広報の重要性について感じました。今回の講演の中で例えばHTVのランデブー技術について、NASAも絶賛するような性能を持っていることは知りませんでした。HTVのHPには安全性の高い有人技術を適用したとの説明がありますが、具体的にそれが何を指しているのかが今回の講演で理解できました。折角の高品質技術なのに具体的な説明もなく「安全な技術」と纏められてしまえば、一般の人々が理解できないのも当然です。今後の技術者は単純に技術を探求していくのではなく、自ら技術について多くの人に伝えていく必要があるのだと感じました。
 
 
 
 

冒頭に記述しました通り、当協会のセミナーも今回を持って10回目を迎えることが出来ました。これもひとえに多くの方々のサポートのお陰と思っております。今年度のSTSJツアーは事情により一旦休催させて頂きますが、来年度以降はまた継続して実施していきたいと思っております。STSJは今後も、宇宙に関する全てを多くの人達に知ってもらうため、活動を続けていきます。これからもよろしくお願い申し上げます。

文責:斎藤、補足・修正:五月女

 

     
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